「コミュニケーション」は取れるようになる?

コミュニケーションという言葉の語源や意味

コミュニケーション(communication)という言葉がある。これは動詞の「伝達する」という意味の「communicate」の名詞形である。語源はラテン語の「分かち合う」を意味する「communis」である。

コミュニケーションには、伝達、通信、意思疎通、という意味がある。また、交流を図ること、意思を伝えあうこと、という意味にも使う。

コミュニケーションの手段は「言葉だけ」と思われがちであるが、文字を使う、身振り手振りなどの体の動きなどもある。

コミュニケーション能力とは

「コミュニケーション能力」と聞くと「上手に話す能力」と思われがちであるが、統一された定義はないらしい。
学問的には、「文法の知識、状況に合わせて適切な表現を使える能力、話の一貫性を保つ能力などがあること」、と定義されているようである。

一般的には、「社会生活において、(「話す」に限定せず)様々な方法で他者と円滑に意思疎通ができる能力」と言えるであろう。

コミュニケーションがうまく取れる人の特徴

コミュニケーション能力が高い人にはいくつかの特徴があるようである。ここでは3つの特徴を見てみる。

コミュニケーションがうまく取れる人の特徴1 聞き上手である

会話でのコミュニケーションがうまく取れる人は「相手の話を最後まで聞く」ようである。つまり、「聞き上手」と言えるであろう。

「会話でのコミュニケーションは双方のやりとりで行われる」ということを理解しているため、相手が話しをしているときは遮らず、聞くことに徹している。

コミュニケーションがうまく取れる人の特徴2 結論から先に話す

コミュニケーションがうまい人は「結論から話す」ようである。

相手が知りたいのは話の結論である。丁寧に話していても、結論が見えなければ聞き手には「何を伝えようとしているのか」が伝わらない。

コミュニケーションがうまく取れる人の特徴3 非言語を意識している

コミュニケーションがうまい人は「言葉以外の方法でも伝える」方法を考えているようである。

伝えたいことを言葉のみで伝えようとするのではなく、身振り手振りを加え話したり、図やイラストなどの視覚的な要素を入れたりする。これらの「非言語」で伝えるのは、相手からどのように見えているか、また、どのようにすればうまく伝わるかを細かく考えているからであろう。

「コミュニケーションが取れない」とは

コミュニケーションがうまく取れる人がいるのと同時に、コミュニケーションがうまく取れない人もいる。

コミュニケーションがうまく取れない人の特徴として「経験値が少ない」がある。コミュニケーションは他の事柄と同じように経験を積むことでうまくなっていく。(「特定の人と」だけではなく)多くの人とのコミュニケーションをとる経験が少なければ経験値は上がらないであろう。

経験値が上がらない理由として、「トラウマ的な経験した」が挙げられる。過去に「人とはあまり関わりたくない」となってしまう経験があると、コミュニケーションを取るのが面倒になってしまう傾向がある。

また、「人とはあまり関わりたくない」となる要因に「警戒心」がある。会話などをするときに「こんなことを言ったら失礼だろうか、どう思われるだろうか」と考えてしまい、楽しめなくなってしまうのである。

コミュニケーションが取れないときの対処法

「コミュニケーションは苦手だけどやらなければならない」という場面での対処法を紹介していく。

まず、「相手の話を聞く」ことである。相手の話を聞かなければ内容を評価できない。内容を評価して初めて自分の意見を言える。また、「相手の内容に賛同できないときは無下に否定しない」のも大切である。否定すると相手は行き場をなくしてしまうからである。

そして「会話はキャッチボールである」と意識することである。一方的に喋るのではなく、相手が対応しやすいように工夫することが大切である。

また、「不明点が出たらその場で聞いておく」も大切になる。わからないまま放置すると後で問題になり、「コミュニケーション能力がない」と評価されてしまうことになりかねない。

コミュニケーションは取れるようになる

コミュニケーションを取ることは、難しいことではない。「自分の考えを伝え、また、相手の考えを聞く」ということを意識すれば自ずとコミュニケーションをとれるようになる。また、「相手に伝えるには、言葉だけでなくどのような方法があるか」を探すのも有用であろう。

「コミュニケーション障害」と仕事

コミュニケーションがうまく取れない状態があることを、医学的に「コミュニケーション障害」と診断されることがある。
ここではコミュニケーション障害と仕事の関係についてみていく。

「コミュニケーション障害」とは

医学的なコミュニケーション障害の症状を端的に表すと、「他人との会話が難しい」となる。アメリカ精神医学会による診断基準では、次のことが困難であるとされている。

  • 言葉を相手に伝わるように発声すること
  • 流暢にスラスラと話すこと
  • 他の人と円滑な会話をすること
  • 相手の話をうまく汲み取り、言葉を返すこと
  • 正しく言葉を使うこと

仕事をするときは必ず相手がいる。「1人で仕事をする」といっても仕事を発注する相手がいる。では、他人との会話が難しいコミュニケーション障害があると仕事ができないのであろうか。
ここでは、コミュニケーション障害がある人に向いていない仕事と向いている仕事をみていく。

コミュニケーション障害がある人に向いていない仕事

コミュニケーションがうまく取れない人に向いていない仕事の特徴を挙げてみる。

1. 頻繁に会話を求められる対人業務

接客業、営業、カウンセラーは顧客(相手)との会話というコミュニケーションが欠かせない。これらの仕事は「相手の意向や考えを汲み取り、それらに対応する」という特徴がある。そのため、相手との言葉のやり取り(会話のキャッチボール)が困難な人には向いていない。

2. 臨機応変な対応を求められる

トラブル対応など、その状況に応じた対応を求められる仕事もコミュニケーション障害がある人には向いていない。
状況ごとの対応がマニュアル化されていれば良いが、マニュアル化されていない、またはマニュアルに記載されていない状況が出てきたら、判断を仰がなければならない。このとき、「起こっている状況を、わかりやすく」説明する必要がある。

3. マルチタスクの仕事

複数の業務が同時進行するマルチタスクの仕事も向いていない。
複数の業務を抱えると関わる人も増えることになる。また、それぞれの業務が連携し合うときは、進捗管理やトラブル発生時の対応や報告など、より多く、そして密なコミュニケーションが必要になるためである。

4. チームで動く仕事

チームで動く仕事は「2人以上のメンバーがいる」、「それぞれが協業する」という特徴があるため人間関係の構築が不可欠である。

向いていない仕事の共通点

これらの仕事の共通点として「意思疎通が必要」がある。相手の話を聞く、起こっている状況を伝える、作業を依頼する、といったことが頻繁に起こる仕事はコミュニケーション障害がある人にとっては大きな負担になりかねない。

コミュニケーション障害がある人に向いている職種

コミュニケーション障害がある人に向いていない職業の特徴を読むと、「コミュニケーション障害があると仕事に就けない、または就きにくい」と考えてる人も多いかもしれない。しかしながら、コミュニケーション以外の素養や知識があれば、コミュニケーション障害があっても就ける仕事はある。

ここでは、素養や知識の特徴で分類してみる。

1. センスや表現力

特定の分野のセンス、つまり「美的感覚、感性、感度」があり、表現力も備わっていれば就ける仕事として、翻訳者、ライター、イラストレーター、動画編集者などが挙げられる。

これらの仕事は依頼主から求められた内容を、翻訳者やライターは文章で、イラストレーターや動画編集者は視覚で表現する力が求められる。

2. 深い知識

特定の分野に対して専門とまでなくとも深い知識があれば、翻訳者、ライター、司書、校閲者、農業従事者、研究職、アクセス解析士などに就ける。

2-1. 翻訳者やライター

翻訳者やライターは、センスや表現力に加えて専門知識があれば表現の幅が広がるため、その分野に詳しくない人のための解説文を書くなど、より良い表現の文章が書ける。

2-2. 司書

司書は図書館にある図書や資料を管理し、利用者から問い合わせがあったときにどの資料や図書が良いかの情報を提供をする仕事である。コミュニケーション能力より管理能力や利用者の対応能力が必要になる。

2-3. 校閲者

校閲とは、出版物の原稿を読んで、書かれている内容が正しいか、差別など不適切な表現が使われていないか、などを緻密に調べる仕事である。専門知識があることでより正確な内容や表現を調べられる。

2-4. 農業従事者

農業従事者にとって大切なことは農業は作物の出来高で、出来高を高くするためには土壌管理が必要になる。土壌管理には作付けする土地の土壌、肥料の種類や特性、水の管理など多方面の知識が必要になる。

2-5. 研究者

研究者の仕事は、培った専門知識を基に大学や企業で新しい知識や技術を生み出すことである。そのため、専門知識や独創性、そして継続的な学びが必要になる。

2-6. アクセス解析士

アクセス解析士はウェブサイトのアクセスデータから依頼された企業や団体などに改善案を出す仕事である。依頼された企業の業種や団体の活動内容の知識があれば、より良い改善案を出せる。

3. 正確性や速さ

工場作業員、清掃員、ビルメンテナンス、データ入力、スーパーなどのレジ担当などは正確性や速さを求められる。

3-1. 工場作業員

工場作業員は工場のラインなどでの製品の組み立てや梱包をする職種である。この仕事は「同じ(または似た)操作を繰り返す」という特徴がある。正確性が損なわれると製品や梱包の品質のバラツキが多くなる。また、作業が遅いとラインが滞ってしまう。
正確に、そして速く作業できるのであれば、工場作業員に向いているであろう。

3-2. 清掃員

清掃員は公共施設やオフィスの清掃をする仕事である。基本的な清掃方法や清掃技術を身につけていれば働ける。しかし、公共施設やオフィスの清掃は深夜や休業日などの人がいない限られた時間帯の作業になることが多いため、正確さや速さが必要になる。

3-3. ビルメンテナンス

ビルメンテナンスはオフィスや商業施設の保守や管理をする仕事である。施設に不具合やトラブルがあったときに正確に、そして速く対応しなければならない。そのためには技術力と状況に応じた応急処置の能力も必要になる。

3-4. データ入力

データ入力は文字通りパソコンを使って文字や数字のデータを入力する仕事で、高い正確性と速さが求められる。「依頼されたデータを入力していく」という性質上、依頼主とのコミュニケーションが少なく、納期はあるものの「自分のペースでできる」という特徴もある。

3-5. スーパーなどのレジ担当

スーパーなどのレジ担当は「商品を受け取り、精算をする」と、言葉だと簡単に見えるが「操作を間違えてはいけない」という大きな特徴がある。近年ではPOSシステムの導入で値段自体を打つことは大幅に減ってきたが、「野菜などのバーコードを付けられない商品の値段を打ち間違える」、「バーコードを2回読み込ませてしまう」といったことが起こらないように高い正確性が求められる。また、時間帯によっては来店者が多くなるため、速さも求められる。

4. 用心深さや冷静さ

施設やイベント会場での防犯、保安員である警備員は用心深さや冷静さが求められる。

施設やイベント会場では不特定多数の人が出入りするため、いつどこでトラブルなどが起きるかわからない。そのため受け持ちの区域をくまなく目配せする用心深さと、トラブルが起きたとき、起きそうになったときに適切に対処する冷静さが求められる。

5. 慎重さ、地理の知識、体力

自動車を運転する仕事は基本的に1人のためコミュニケーションは必要ではないが、長距離トラックやバス、タクシー、配達員は慎重さと地理の知識が求められる。

バスやタクシーの運転手は「他人の命」を、配達員は「他人の財産」を預かっているということである。軽々しい運転をしていると、事故などで乗客の負傷、荷物の破損などが起こりうる。これらを防ぐために慎重な行動(運転)が求められる。

タクシーや配達の運転では地域や時間帯によって道路の混雑具合が変わることがある。そのため、「どの道を通れば速く目的地に到着するか」を判断する能力が必要になる。

一般道では信号、歩行者、対向車など、様々なものや方向に注意を向けるために、精神的な疲れが生じる。また、高速道路では長時間の運転になりがちでずっと同じ姿勢のままであることから肉体的な疲労が蓄積しやすい。
これらの要因により自動車の運転は見た目以上に疲労するため、体力も必要になる。

コミュニケーション障害がある人に向いているか否かは一概に言えない仕事

コンピューターシステムの開発や保守を行うプログラマーやシステムエンジニアは、職場や立場によってコミュニケーション障害がある人に向いていたり向いていなかったりする。

一般的に「プログラマーやシステムエンジニアはコミュニケーションはあまり必要ではない」と思われがちであるが、役職や担当によっては顧客から「どのようなシステムを作るのか」を聞き出さなければならない。これは当にコミュニケーションが必要な場面であり、コミュニケーション障害がある人には向いていない。

また、「どのようにシステムを作るかが決まり、あとはプログラムを作っていくだけ」であれば、疑問点を聞く、この解釈や判断で良いかの確認をする、といったごく限られたコミュニケーションだけで良く、コミュケーション障害がある人でもこなせる。これは、システム開発のメンバーに限らず、クラウドワーカーなどの「プログラミングを受注する人」にも向いていると言える。

どんな仕事が向いているかを見つける

コミュニケーション障害があると「仕事がない」と思われがちであるが、自身の素養や持っている経験や知識によってはこなせる仕事は見つかる。

どんな仕事があるかは、下記の就労支援をしている機関や団体に聞いてみるのが良い。

  • 就労移行支援事業所
  • 精神保健福祉センター
  • 地域障害者職業センター
  • 障害者就業・生活支援センター
  • 障害者就労支援センター
  • 基幹相談支援センター
  • ハローワーク
  • 地域若者サポートステーション

参考資料

weblio辞書
コミュニケーション能力とは?能力が「低い」とされる原因や仕事でのコミュニケーションに役立つ工夫を紹介します
コミュニケーション能力(読み)コミュニケーションノウリョク
コミュニケーション能力が高い人の見極め方
コミュニケーション能力が低い6つの原因
コミュニケーションが苦手な人が覚えておきたい対処法7
コミュニケーション障害
【専門家インタビュー】理化学研究所生命機能科学研究センター 渡辺恭良先生 Vol.2 「長距離移動時の疲労のメカニズム」
コミュニケーション障害のある人に向いてる仕事 仕事上での強みを解説
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